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生活空間快適エコライフ

プロが教える!生活空間快適エコライフ

2015年12月号

暮らしの灯りを上手に使う(フィンランド)


最終回となる12月号では、私が暮らすフィンランドの冬の暮らしを取り上げます。12月のフィンランドでは室内でできるだけ居心地よく暮らすことを考えており、昔から灯りを上手に使ってきました。冬の灯りの使い方についてもご紹介します。

フィンランドの照明の工夫

フィンランド人にとっての12月とは

 フィンランドの人たちにとって12月は1年の中で、とても楽しみにしている月のひとつです。クリスマスがやってくるから、というのもありますが、もうひとつ大きな要素として、日照時間の長さが関係しています。
 短い夏が終わると徐々に日照時間は短くなっていき、11月ともなれば、朝は8時ごろにようやく日が昇り出し、16時ごろには日が陰り出します。明るい時間が短くなることは、フィンランド人の憂うつの種なのです
 「12月は?」というと、日はさらに短くなるのですが雪が降り始めます。すると雪の白さで街が明るくなるのです。だから、フィンランドの人は12月の訪れをとても待ち望んでいるのです。

憂うつな冬をキャンドルで和らげる

フィンランドの大型スーパーではキャンドルの常設レーンが。

 フィンランドでは、1年を通してよくキャンドルを使います。夕暮れ間近の窓辺を飾ったり、テーブルの上に置いてキャンドルの灯りでコーヒータイムを楽しみます。種類も多くて、大型スーパーではキャンドルだけのレーンもあるほどです。
 12月になるとさらにキャンドル熱は高まります。広場に行くと「クリスマス市」が立ち、クリスマス用品がずらりとラインアップ。キャンドルもたくさん並びます。家庭ではクリスマスのオーナメントと一緒にキャンドルを思い思いに窓辺に飾ります。外から見える印象をよくするだけでなく、自分たちの生活の中でキャンドルを楽しんでいるのです。
 焚火や暖炉の火を見ていると心が落ちつくといいますが、ゆらゆらと揺れるキャンドルの灯りを見ていても、何となく心が休まる気がします。フィンランドの暗くて長い冬の憂うつな気持ちを、キャンドルの灯りがやさしく癒してくれるのかもしれません。

太陽が沈んだあとの室内

窓辺をキャンドルで飾る。キャンドルの炎を消す時に便利な道具も一緒に販売されている。

 フィンランドでは、うっすらと日が陰り出すころ、壁や天井を照らす小さな間接照明をつけ、キャンドルに火を灯します。事務所などでは、部屋全体を照らす蛍光灯もありますが、住居ではスタンドライトなどの間接照明を生かしたインテリアを楽しんでいます。

 かつては、長い夜をキャンドルの炎の光で過ごしていたからでしょうか。フィンランドでは今も小さな光を上手に使って室内を心地よくしつらえているのです。

暮らしの「灯り」を上手に使って楽しくエコライフ

部屋全体を照らすのではなく、雰囲気のある間接照明を使う

天井や壁を照らす間接照明。部屋全体を明るくしたときよりも、気持ちが落ち着く効果もあるでしょう。

 ここからは「灯りの使い方」について、アイデアを紹介します。

●目的に応じて必要な光を使い分ける
 部屋全部をいつも明るくしておく必要はありません。天井に向けてクリップライトを照らすなど、ところどころに間接照明を設置するだけでも十分です。その上で、本を読むなら読書灯を加えたり、お茶を飲むなら、テーブルだけをスポット的に照らしてみてはいかがでしょうか。無駄に照明をつけず、必要な光を必要なタイミングで使いこなすことで、電気の無駄を省きつつ、同時に室内の演出もできます。

●キャンドルを使った灯りの演出
 キャンドルは手軽に部屋の雰囲気を変えることができる優秀なグッズです。ときには、照明を消してキャンドルでディナータイムを送ってみてください。いつもと違う気分で食事が楽しめるでしょう。

●暗さに慣れてから照明をつける
 人は明るいところから急に暗いところへ行くと真っ暗に感じます。夕暮れ時などは、家に入っても、習慣的に電気のスイッチをつけるのではなく、目を少し慣れさせて、それでも光が足りないと思ったら照明をつけましょう。

 以上のポイントに注意して、暖かな冬を送りましょう。

 

最後に……
 皆さん、これまでお読みいただき、ありがとうございました。国内外の昔の住まいについて、そして、それにまつわるエコライフについて、1年間ご紹介してきました。
 昔の住まいや暮らしについて語ってきたのは、決して「昔の生活に戻りましょう」ということを伝えたかったからではありません。過去の暮らし方を知ることは、今の生活を振り返るきっかけになるからです。また、暑さ寒さをしのぐ住まいの工夫や道具の起源に、おもしろみの発見もあるでしょう。
 もしお時間があれば、バックナンバーをご覧ください。
 住まいの歴史を振り返り、気候風土にあった暮らしとはどういうものかを知ることで、生活がより豊かに楽しくなるのではないでしょうか。
 では、またお目にかかる日まで。モイモイ!(Moi Moi!)*

フィンランドより感謝をこめて。鈴木信恵

*モイモイ:フィンランド語で「さようなら」を意味します。

冬の定番の飲み物、グロッギ。

 フィンランドをはじめ北欧では、クリスマスシーズンになると、「グロッギ」と呼ばれるホットドリンクが飲まれます。クランベリジュースやグレープジュースをベースにシナモン、グローブ、カルダモンなどのスパイスを煮込んだもの。大人用としてはワインをベースにしたものもあります。
 フィンランドの人たちはカルダモンが大好きで、クリスマスにはグロッギと一緒にカルダモン入りの薄いクッキーを楽しみます。

アドバイザー

鈴木 信恵 (すずき のぶえ) さん

住環境デザイン・子ども・温熱感覚をキーワードに研究活動を行いながら、自然を活かした住環境の大切さをユニークなプログラムで伝えている。著書に『暑さとくらし』『寒さとくらし』ほるぷ出版(単著)、『設計のための建築環境学』彰国社(共著)などがある。フィンランド在住。

※これまでの快適エコライフはこちら

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