情報誌「くらしと」に掲載されている「トリクムクミアイ~トナリの管理組合の選択と決断~」の記事をご紹介!
オーダーメイドの大規模修繕。
キーワードは"チーム力"
ライオンズマンション光が丘公園理事会の方々。理事長の袴田さん(後列左から2番目)は、理事会と大規模修繕委員会、設計事務所・施工業者、管理会社をつなぐパイプ役として奔走した。
【トリクム2・新たなライフステージ】
居住者が満足する空間づくり
ファサード
夜になるとガラススリットからエントランスの明かりが漏れ出す。エントランスの光を邪魔しないよう、植栽は高さの出ない植物に変更した。それにより、これまでは植栽が壁にぶつかり、その箇所だけが汚れてしまっていたが、そのような汚れ方も防ぐことができるようになった。
エントランス 今回、大幅に変更を加えることで、次回以降にほとんど手を入れる必要がないように設計されている。
【A】【B】左官職人が手作業で仕上げた砂岩石調の壁面は、年月を経るとともに、風合いが増す意匠。【C】日常のコミュニティ活動に活かせる場所にするため、新たにテーブルセットを設置。
ライオンズマンション光が丘公園/東京都練馬区
【トリクム・1 大規模修繕5つのポイント】
目標は中長期の中で設定する
今回の工事では、「大規模修繕だからこれをやらなければ」ではなく、今このマンションには何が必要か、自分たちはどう変えたいのかという視点で工事内容を決め、それを達成するための手法を探っていった。
2号連載で紹介する『ライオンズマンション光が丘公園管理組合』の活動事例。第1回目の今号では、大規模修繕工事を効果的に活用し、住環境と資産価値の向上につなぐための取り組みを、管理組合理事長・袴田さんに伺った。
「共有資産から大きな金額を投入するのですから、無駄なく使うために一般的に工事メニュー化された内容だけではなく、中長期の展望に基づいて内容を検証する必要がありました。そこで今回の大規模修繕では、大規模修繕委員会と理事会でオーナーの意向調査結果から方向性をとりまとめ、このマンションの特性に合わせたオーダーメイドの修繕計画作成を計画予算内で設計事務所に依頼しました。
幸い私は仕事で建物の新築や改修に携わった経験があったことから、大規模修繕の検討と計画に必要な知識があったので、投資効果を考慮して先々の修繕対応までを想定した総体的な視点で取り組まなければならないと考えていました。
それは工事着工前に行う詳細な建物調査の結果に基づき、今回に行う必要性が高いものでメリットが生まれることは実施し、今すぐ必要のない工事は仕様変更により省力化する。これにより当初の大規模修繕計画で積算していた通常の工事費用に近い金額に収めつつ、必要なことはほぼ達成することができたと思っています。
このマンションは都心に近く、6000㎡の敷地、低層の3階建、平置駐車場と好条件が揃っていますので、既存の建物意匠や敷地景観、機能性を見直して、新たな住環境として再構築することで資産価値の向上が期待できました。意匠の向上は、第1回目というタイミングでないと実現することは難しく、マンション管理や生活機能維持の経費節減も課題として設計事務所と打合せを行い、実施計画を整理しました。
また、現在の世帯主の平均年齢を40歳程度と想定すると、マンション維持に関する安定した資産形成が見込める期間は今後約20年間であり、日本経済の景気変動も考慮すると修繕積立金の値上げや一時金の徴収は難しく、できれば避けたいため、中長期の収支管理を踏まえて着手する優先順位を整理する必要がありました。
したがって、第1回目は建物躯体の維持性能の確保と最新マンション同等の意匠と設備機能を獲得し、第2回目の中規模修繕は、駐車場や自転車置場などの敷地環境の意匠と機能性の整備が優先課題となると考えています。さらに第3回目以降は、生活機能維持に注力することになります。この計画については現在設計事務所および今回の施工業者とともに詳細を検討・整備中であり、次回の総会で提案・審議を行う予定です。
今回の大規模修繕では、当マンションの顔である北側のファサード(外観)、エントランス内、駐車場アプローチの意匠変更を行いましたが、これは資産価値の向上だけでなく、既存環境がどれだけの魅力を持っていたのかを再表現して、居住者に新たなライフステージを供するという一面がありました。第1~2期の大規模修繕委員会に関わった多くの理事会役員の努力により刷新した住環境について、オーナー全員に日々の生活の中でそれぞれに変化を実感してもらい、満足感を持ってもらえるように努めました。
これこそが今回の工事の目的であり、重要な評価軸であると考えています。