情報誌「くらしと」に掲載されている組合取材レポートをご紹介!
みんなで考えよう 20年後のこと。建替えのこと。
マンションは、人間の体のように衰え、寿命もある。
「建替え」と急に言われても、ピンと来ない方も多いでしょう。
そもそも、どういうことなのかを人間の体に例えて考えてみましょう。
私たち人間は、年齢を重ねても健康な体で長生きできるように、さまざまな備えをします。同じように、マンションにも老朽化の影響を最小限に抑えるための備えが必要です。
実際、毎年1回の健康診断の代わりに「定期メンテナンス」を実施したり、健康保険を支払うように「修繕費の積み立て」をしたりと、皆さまのマンションでも取り組まれているはずです。そう考えると、10〜15年に一度の「大規模修繕」は体の機能を回復させるための手術と言えるでしょう。
マンションを人間の体に例えたのは、次の二点を再確認していただきたかったからです。
一つ目は、人間と同じようにどのマンションも例外なく「寿命がある」ということ。「大規模修繕」の技術が日進月歩で進化し、マンションの寿命は以前よりも延びていますが、いつかは限界が訪れます。特に、旧耐震基準のマンションは、その心配が大きい状態であると言えます。
二つ目は、マンションは人間とは違い「生まれ変わる」ことが可能だという点。老朽化による諸問題を解消するだけでなく、住み慣れたその場所で、まったく新しい付加価値を持つマンションとして生まれ変わるという選択肢が「建替え」なのです。
「建替え」で、理想の未来をオーダーメイド。
マンションの「建替え」を行う際、その設計図を描くのは居住者の皆さまの声です。
「たっぷりと日差しが降り注ぐ吹き抜けが欲しい」「もっとセキュリティーを強化したい」
といった設備や住み方に対する未来への思いが集まり、生まれ変わったマンションの姿を形づくっていきます。居住者一人ひとりの要望をまとめるのは大変かもしれませんが、その苦労の分だけ完成後の満足度も高まります。
このように、老朽化によりしかたなく選択されていた「建替え」も、理想の未来をオーダーメイドできる手段として考え、取り組むことでポジティブなものに変えることができます。
「建替え」で、マンションの未来を考えるコミュニティーが育つ。
そこでポイントとなるのが、いつ「建替え」を意識しはじめるのかということ。自然に話を進められるのは、やはり「大規模修繕」の話をするタイミングになります。「まだ、不便も感じていないし……」という声もあるかと思いますが、マンションの機能に余裕がある状況だから、ポジティブに「建替え」を考えることができるのです。
健康な体を保つためには、予防が大切であると言われます。
そのために、病気になる前の「健康な体」のときにこそ、将来の備えが必要です。マンションも同じで、築25年をめどに行われる2回目の「大規模修繕」が落ち着いた頃に、10~20年後のマンションの姿をお子さま、お孫さまのためにも語り合える環境を整えていくとよいでしょう。
また、「建替え」のための委員会を管理組合が兼ねるケースが多いようですが、それにこだわらず、居住者全員が当事者意識を持てるコミュニティーづくりが大切です。
実際に「建替え」に成功したマンションの事例では、「建替え」という目標を設定したことによって居住者同士の交流が活性化し、イベントや管理組合に積極的に参加する方が増えるといった好循環が生まれています。また逆に、日頃から良好なコミュニケーションのあるマンションでは「建替え」がスムーズに進行しているケースが多いようです。
「建替え」で未来が変えられるという意識を居住者で共有できれば、次の世代のために何が必要かということも自然と考えられるようになります。その話し合いのなかで、「大規模修繕」を採用するという結論も当然でてくるはずです。大切なのは、早期から準備を整え、「マンションを将来につなぐ場所として管理する」プロセスを持ったコミュニティーを育んでおくこと。そうすれば自然と、次の世代に残すための資産としての価値も生み出すことができるでしょう。