情報誌「くらしと」に掲載されている組合取材レポートをご紹介!
居住者で共有できる「コンセプト」が、
マンションへの愛着を深める。
近年、個々のマンションが持つ「コンセプト」が注目を集めています。趣味嗜好や家族構成など特定のニーズに応えたものから、居住者が積極的に交流できるように毎月イベントを実施するマンションなど、スタイルは多種多様。
コンセプトとは、暮らしのあり方を大きく左右する"思い"のようなもので、それがマンションの資産価値にもよい影響を及ぼすといえるでしょう。
今回の「We Loveマンション」は、2015年に竣工したばかりの最新マンションの事例をもとに、マンション内のコミュニティー醸成にコンセプトがどのように効果を発揮するかを考察します。
「うちは新築じゃないし、関係ないのでは?」とお思いの皆さまのために、新たなコンセプトを構築するポイントをご紹介する記事もご用意しました。
ビオトープの状態に全居住者が注目。
その関心が、理事会活動の活性化に。
横浜市北部に広がる港北ニュータウンは、都市と自然が融合する街として、子育て世代に人気のベッドタウン。「ライオンズ港北ニュータウンローレルコート」は、そうした周辺地域の豊かな自然を敷地内に再現することで、緑と共生するマンションライフをコンセプトに建てられた最新型マンションだ。
「緑化をコンセプトにしたマンションは多いですが、こちらの特徴といえるのが、『敷地内の自然を、居住者が自分たちの手で育てていく』という点です。もちろん、専門家の力を借りながらですが、理事会で話し合い、計画を立てて、維持管理をしています。マンションで暮らしながら里山を育てる感覚に近いですね」と管理組合の小泉理事長が語るように、居住者交流のスタートも、入居前に行われた植樹会だった。
「ビオトープのきれいな池と緑が隣にある暮らし、というイメージをふくらませていたのですが、実際に暮らしてみると、想定外のことばかりでした。藻が過剰に繁殖したせいで池の色は悪く、さらに蚊が発生して子どもが近づけないという意見も寄せられました」(ビオトープ担当理事・首藤さん)
ただ、そうした声を上げる居住者の方も、自然に囲まれた豊かな暮らしを実現したい、というコンセプトは共有している。
だからこそ、「自分たちの手で理想を形にしなければいけない」という使命感とともに、理事会の皆さんは積極的に動いた。植栽管理会社とのコミュニケーションを増やし、一つひとつの問題に対策を施していった。
「活動を進めるなかで、問題解決が理事会と植栽管理会社のなかで完結してはいけないと気付きました。重要なのは、居住者のみなさんとビオトープの"理想"だけでなく、"現実"も共有することだと」(神田副理事長)
そうした考えから実施されたのが、メダカの放流会だ。
「蚊の幼虫であるボウフラを食べるメダカを放流することで、蚊の発生を抑えようという案は、当初からありました。つまり、生態系を循環させるために必要な施策を、参加型のイベントに発展させたのです」(小泉理事長)
その後、ビオトープを使ったイベントを3回ほど行ったが、どれも大盛況。居住者のビオトープへの関心の高さを改めて実感した。
「イベントには、植栽管理会社にも参加してもらい、ビオトープ整備のロードマップに対して、現状うまくいっている点、課題となっている点を専門家の目線で居住者の皆さんに話してもらいました。こうした積み重ねで、皆さんの意識も変わってきたと思います」(神田副理事長)
まだ発展途上だが、目に見える変化も出てきている。子どもたちが、自分の手で放流したメダカが卵を産み、小さなメダカが池を泳いでいるのを興味深く観察する姿があった。この風景こそ、ビオトープの一つの理想だ。
「次はエビの放流会を考えているのですが、これも単なるイベントではなく、藻の繁殖を抑えるという目的があります。さらに、これからは枯れ葉の清掃を居住者みんなで行うなど、もっと居住者参加型でビオトープの整備活動を広げていきたいですね」(首藤さん)