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情報誌「くらしと」取材レポート

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2017年3月号

震災備忘録

防災や減災という言葉は、東日本大震災以来、生活の中にかなり溶け込んできたといえるだろう。
一方、その大切さを実感していながらも、「防災力を高めるために、何から始めればいいの?」と、具体的な行動は起こせていないマンションは多いようだ。

今回は、まさに今、減災活動を始めようとしているマンションの事例をご紹介する。これまで、防災訓練を行っていなかったマンションが、どのようにしてはじめの一歩を踏み出し、目標を設定しているのか――この体験談は、減災に取り組もうとしているマンションにとって、貴重なヒントになるだろう。

竣工20周年という節目を、減災元年に。防災倉庫作りが進行中。

モリス南越谷(埼玉県越谷市)の集会室に入ると、壁に貼られた大きな模造紙が目に飛び込んできた。そこには「防災ウォークラリー」の大きなタイトルのもと、たくさんの写真が飾られていた。

防災ウォークラリーとは、南越谷一帯の自治会が共同で年に2回ほど行っている防災イベントのこと。その名前の通り、他の自治会がどんな取り組みをしているのかを、歩いて見て回る。
「今回は管理組合メンバーが参加したので、そのときの様子を収めた写真と、イベント参加で学んだ情報の報告を壁面展示という形で行いました。

ちょうど、このマンションが昨年に竣工20周年を迎え、居住者の皆さんでお祝いイベントを開催しました。その場で、モリス南越谷はこれから防災に力を入れていくことを報告したんです」
そう教えてくれたのは、マンション管理組合の一員であるとともに、南越谷地区の防災部会の一員としても活動している田辺さん。8年間、マンションの管理と地域の防災に携わってきた。その経験から、このマンションには防災倉庫が必要だと思ってきたが、議題にあがっても、「倉庫を作って、そこに何を入れようか」というところで、話が止まっていた。

「そこで、防災ウォークラリーに参加して、他の自治会が防災倉庫に何を備えているのかを調べて、皆さんに知っていただこうと思ったんです。20周年イベントという多くの方が集まる場で、写真とともに情報発信するのはとても有意義でした。その上で、防災倉庫を作ることについて、関心を持っていただけたのではないでしょうか」

田辺さん念願の防災倉庫作りは現在、購入する倉庫の選定段階に入っている。選定には、防災ウォークラリーで学んだ知識が役に立つ。素材は、錆びにくいアルミ製。万一のとき、障害物によって扉が塞がれないように、扉は2カ所についているというのも外せないポイントだ。
また、収納する備蓄品のリストも仕上がりつつある。家庭では用意できない発電機やテント、炊き出し用のかまどなど大型のものを優先的に備える。飲料水も大切だが、69世帯×1週間分を備えればそれだけで倉庫はいっぱいになってしまうため、各家庭での備蓄の周知に力を入れなければいけない。
「防災倉庫を作って終わりではなく、これはモリス南越谷にとって防災対策の土台になるものだと考えているのです」と、モリス南越谷自治会の辻会長は決意を語る。

「防災の整備は、誰もがやらなきゃいけないと感じていることです。でも、誰かがやってくれるだろうという思いも同時に持っています。私たちの代の理事は、20周年という節目の勢いを借りて、一歩を踏み出すことができました」

具体的に行動を起こしていくと、今まで気づかなかったことが見えてきたという。






防災を居住者みんなの自分事に。共通意識を育てることが大切

まずは、マンションとして共通となる防災意識の必要性だ。
「もし今、地震が起きたら69世帯の人が一斉にエレベーターと階段に押し寄せて大変なことになるはずです。それは、避難経路や順番を明確に決めていないから。皆さんの不安をなくすためには、定期的に防災イベントを行って居住者の方に周知したり、掲示板に貼ったりと、意識づけを行わなければいけません。さらに、私たちも落ち着いて先導できるような事前準備をする必要があります」(辻自治会長)

先の竣工20周年イベントも、防災活動として活用した。駐車場にテーブルを並べ、その上にカセットコンロを数台置いて、300人分のカレーライスを作り、配布。いわゆる炊き出し体験だ。理事だけでは人手が足りないとマンション内に手伝いを募ったところ、15人が協力してくれた。
「声を掛ければ、多くの居住者さんも協力してくれるのですが、そうした機会が今までなかったのです」(田辺さん)

居住者の皆さんも、防災の必要性は感じているという。モリス南越谷の周辺は、豪雨になると駐車場への浸水を防ぐために防潮板を設置する。
「防潮板の設置は、理事の仕事。だから、大雨になると気になるし、長時間、集会室で待機した経験もあります。一方、理事ではなくても、気がついた方が自発的に、防潮板を設置しようという意識もある。実害が想定される分、居住者にとって水害は自分事なのです。一方で、東日本大震災でもかなり揺れはしましたが建物に影響はなかった。でも、そこから一歩踏み出し地震への備えも自分事と意識することができれば、皆さん協力してくれるはずだと、炊き出しイベントでは再確認できました」(辻自治会長)

コミュニティーイベントの延長線上で防災講習会を行うと、参加者が想像以上に集まりやすい。
モリス南越谷では、竣工20周年という大イベントがきっかけだったが、防災の第一歩として、居住者が自然と集まりやすい場所作りをしてもいいだろう。これからの時期はお花見などもおすすめ。その次のステップとして、防災についての意見交換を試みる。一見遠回りのようだが、コツコツと進むことが一番の近道なのかもしれない。



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